職場から 少し離れた居酒屋。

個室風に 仕切られた席に 俺が着くと

早苗1人が ポツンと座っていた。


「お疲れ様。あれ?川村は まだ?」

「あっ。ええ。さっき 会社を出たって。多分 もうすぐ 着くと思います。」


早苗は 相変わらず 綺麗で 眩しくて。

2人きりでいることが 息苦しいほど…


「俺も 一緒でいいの?邪魔して 悪くない?」

「いいえ。こちらこそ。無理に誘って 迷惑でしたか?」

「そんなことないよ。どうせ 暇だし。」

「寺内さん。恋人は?」

「いないよ。寂しい独り身。まぁ 気楽でいいけどね。」

「クスッ。モテるのに もったいないですね。」

「エーッ。俺が?モテないよ 俺は。性格 暗いから。」

「いいえ。寺内さん 女子社員に 人気ありますよ?」

「まさかー。」

「ううん 本当に。加藤さんとか…」


千夏の名前が出て 俺は うんざりして 苦笑する。


「俺 加藤さんには はっきり断ったんだけどなぁ。」

「えっ?そうなんですか?」

「うん…」

「……」


早苗は 何も言わずに スッと俯いた。


早苗との会話は テンポが合っていて。

声のトーンも 耳に心地よい。


仕事以外で 初めて こんなに長く 早苗と話して

俺は 更に 早苗に 惹かれてしまう。


もう早苗は 川村の彼女なのに…



「ごめん。ごめん。待った?」


川村の 明るい声で 俺と早苗は 言葉を切った。