「え?」

暗闇なのに整った横顔のラインが浮かぶ。

「先輩とダメだった。」

物悲しく蓮の声が空間に消えていく。

「ダメってなんで」

私の声が擦れてる。
蓮の目はどこか1点を見つめてる。

「『こんなの』って言われた。『こんなのやってないで勉強したら』って。」

蓮は自分が描いた絵を見ていた。

「ひど」

つい私の口から本音が溢れる。

「住む世界も、見てる方向も、やっぱり全然違うんだなーと思った」

蓮がやっと私を見た。
懐かしい落ち着いた笑顔だ。

だけど、すごく痛々しい。

こんなのって。
よくそんなことが言えるな。

月で照らされた絵を見る。

「蓮」

私は衝動的に絵の前に行っていた。
蓮が力なく私を見る。

「ねえ、蓮、この絵も、この絵も、私が買うよ」

蓮の目を見る。

「え?」
「金貯めて買うよ」

蓮は意味わかんないという顔で笑う。

「この絵も、この絵も、私の絵だ」
「私の絵って」

蓮が呆れる。