あるデートの帰り。 「じゃあね、月乃」 俺はそう言った後、もう一度だけ彼女に近づき、 「好きだよ」 と耳元で囁く。 「ありがとう」 ほら、やっぱり思っていた通り。 いつもの声で、『ありがとう』。 くるりと背を向けて、俺は月乃から離れる。 「聖也」 急に、俺を呼び止めた月乃。 「ん?」 「これ……」 小走りで向かった月乃が渡してきたのは、封筒だった。 「サンキュ」 頬を緩めて、俺はその一言だけ言った。