まさしく、リアル彼女だった。
 確かにそこに居るのは、いまオレの頭の中を駆け巡っていた奈緒ちゃんだ。

 どっ、どうしよう …… 
 以前なら「ようっ」と普通に声掛け出来たのに。
 一体、オレは何してる。こんなラッキーな偶然、そう無いぞ。

 この根性無し! 臆病者!
 本当、骨なしのチキン野郎だぜ。

 お地蔵さんみたいに固まり、動けなくなっているオレ。
 オレは、オレ自身を責め続けていた。

 その時だった。
 コンビニ店員の明瞭な大声で、オレは我に帰る。
 雑誌コーナーに居た彼女も、顔を振り返らせているのが、視界の隅で見えた。

「骨無しチキンのお客さま〜 大変お待たせしました〜」

 骨無しチキン……
 それオレです……


 彼女と視線が合った。
 先日と同じく、彼女は満面の微笑みを浮かべ、オレを真っ直ぐ見つめていた。


ー終ー