「おーじょーうー。
起きろぉぉぉぉぉぉ」




「んぎゃぁぁぁぁ!!
あ、秋人ぉ!この起こし方はやめてって言ってるでしょ?驚きで心臓が止まりそうよ。」




そう、秋人はいつも私とは布団を引き剥がし、耳元で叫びながら起こしてくる。




「それはいい、一瞬で目が覚めていいだろ?」




何馬鹿なこと行ってんのよ。




「さっさと支度しねぇと、初日から遅れるぞ。
俺の身にもなれよな。
初日から遅刻とかお前1人にしろ。」




「だったら先に行けばいいじゃないの!」




「仕事上無理なもので。」




そう言ってべーっと舌を出す。




私はノロノロと顔を洗い、髪をとき、服を着替える。




「はーい、あと5分〜」



秋人は煽るように残りの時間を私に告げる。



「うるさいわね、急かさないでよっっ」


そして慌てて朝ごはんを口の中にほぉばる。




「ご馳走様。いくわよ、秋人っっ」




そう言って私は玄関を飛び出した。




新しい学校、新しい制服、新しい友達、新しいものがいっぱいでわくわくしている。



「あー…めんどくせぇ」



秋人はそんなことを言いながらも少し微笑んでいる。




いままでとガラッと変わるけど、秋人が隣にいるのは何時になっても変わらない。




それだけで、不安な気持ちが吹っ飛ぶ。




絢斗君の情報、掴んでみせる!!




そう覚悟を決め、私は校門をくぐった。




数分後、始業式が始まり、クラス発表が行われた。




秋人とは、隣のクラス。



ひ、1人じゃない…




てっきり一緒のクラスかと思っていた分、ショックが大きい。




「1人でやってけるか?
まっ、無理だったら俺のクラスにこれば構ってやるよ。」



「何偉そうなこと言ってんのよ。
あなたは私に仕えてるんだからね?」



「学校では、関係ないだろ?
まぁ俺はどっちでもいいが」




私は秋人の態度に腹が立ち自分のクラスへと向かった。



「最後まで聞けっ」




と聞こえたが、私はガン無視をしたのだ。




そして、自分の名前が書かれた席に座る。





すると、担任の先生と思わしき人が入ってきて、順に自己紹介が始まった。




あいうえお順なため、私は最後の方だ。




そして、とうとうか私よ出番がきた。




「花園 アヤメです。
どうぞよろしく。」




みんなは何かしら一言言っていたけれど、そ何も思いつかなくそれだけになってしまった。




これじゃあ友達なんてできない…かも…




「日比野 絢斗(ひびの あやと)です。」



名前だけ言って無言で座る。



あや、と…?




今、絢斗って…




私の後ろの席の人よね?!



私はゆっくりと後ろを振り向く。



すると絢斗君と思いっきり目があってしまった。



私は慌てて身体を前に向け、目を逸らす。



でも、そのも一瞬で分かった。


あの瞳、あの高くて真っ直ぐな鼻、あの薄い唇、あの整った顔は…



絶対あの絢斗君だ!



早く、声をかけたい、話したい。



ずっと探して続けていた人が今、真後ろにいる。



絢斗君……



しばらく経ってようやく話せる時間になった。



自己紹介のあと、先生から連絡があり、帰宅となったのだ。




今がチャンスよ!



私が絢斗君に声をかけようとすると



「絢斗君〜アドレス交換しよー」



「お家はどこら辺〜?」



とクラスの女子たちが一斉に絢斗君のもとへ集まる。



完璧に囲まれてしまった。



これでは声をかけようにもかけられない。



今日は諦めるか…



後ろの席なんだからまだチャンスはある!




すると、秋人の声が聞こえた。




「おじょ…じゃなくて、アヤメ!帰るぞ。」





私は秋人の元へ駆け寄り、その日は大人しく帰ることにした。










「んで、情報は得られたのか?」


「えぇ、勿論。」



私は自信ありげに頷く。



「ほぉ〜、そんなに自信があるのか。
で、どんな内容だ?」




秋人は私を小馬鹿にするように尋ねる。




まだ話していないのに…




きっと「それだけか」とばかにするつもりのだろう。



「本人、見つけたわ!
それも後ろの席よ!!」




「へぇ〜本人ねぇ。
えっ…本人?!ほ、本当なのかっ!?」




秋人は信じられない、と目を見開き私に顔を近づける。





「どうして私が嘘つかなきゃいけないのよ。」




信じてくれない秋人をじーっと見る。




「わ、悪い。
でもまぁ、よかったな。」




「えぇ!でも話しかけれるチャンスがないのよね。」




私はガクッと肩を落とす。




真後ろというい近くの席にいるというのに、かあの状がは続いていたら話しかけられるはずが無い。




何とかしてチャンスを掴まねば!




「まぁ頑張れよ。
俺は先に帰るよ、用事があるんで!」




秋人はそう言うなり、しまそそくさと走っていってしまった。





なんとか会話をして婚約者になってもらう所まで進めないと…




と言っても恋愛関係はな初めてのこと、何一つ分からない。




婚約者を彼にしたい。というのはあるものの自分が彼に抱いていた感情が果たして恋愛的感情なのか…




今日も帰って本を読みましょ。



いつも、恋愛について困ったときはとあるのラブストーリー小説を読んでいるのだ。










そして私は家に帰るなり本棚から小説を取りだした。




「これこれ。」




私は小説を手に持ち、ベッドに寝転がる。




【まさき君、あたし…
まさき君が好きなの!】

【あたしは手紙で屋上にまさき君を呼び出して、長年胸に秘めていた言葉を告げる。】

【ことみ…俺も…】



「…っ!
これだわ!!呼び出せば2人きりになれる。つまり、話せる!人のいない所に呼び出さないと…」



私は小説をパタンと閉じて起き上がる。



まずは手紙を書かないと!



私は引き出しを開けて小さめの紙を取り出す。




絢斗君へ
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放課後校舎裏へ来てください。
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これで、いいかな。



最後に自分の名前を書くべきか迷ったけれど、なんだか恥ずかしいので書くのを辞めた。



あとはな明日になるのを待つのみだわ。



それにしても、秋人…遅いわね。



まぁいてもいなくてもたいして、変わらないけど……




お父様ものお母様も仕事で帰りが遅い。




静かな空間に1人になることなんて全くなかったから少し、ほんの少しだけ、心が寂しくなる。