拓也の肩をポンと叩いて、光は歩き出す。歩きながら、光は兄の影響で好きになった曲を口ずさんだ。

「……その曲知ってる!『唐辛子に抱かれて』だ!」

「違う!『木枯らしに抱かれて』!唐辛子になんかに、抱かれたくないわ!」

そうツッコミをして、光は苦笑した。



「光!トランプで遊ぼう!!」

昼休み。光が図書室で借りてきた本を開いた瞬間、拓也がトランプを持って、光に話しかけた。

光は本から顔を上げて、「良いよ」と本を閉じる。

「やった!負けたら、ジュース1本を奢る!」

拓也はそう言いながら、前の人の席のイスを拓也の席に向けて、座った。

「じゃあ、ジジ抜きしよ」

「ん、オーケー」

光の提案に、拓也は2枚あるジョーカーを抜いて、トランプをシャッフルする。

「ジジは、どのカードにする?」

トランプを机に広げて、拓也は問いかけた。

「じゃあ、これで」

1枚トランプを抜いた光は、筆箱の下にトランプを隠し、拓也は配り始める。

ジュースをかけた戦いが、今始まる――。



「やった!勝った~!!」

拓也は、手を広げて伸びをしながら言った。結果は、拓也の勝ち。

「……負けた。で、何のジュースが良いの?」

「んーとね、コーラ!」

「はいはい。じゃあ、帰りね!」