間近で見た彼が、うん、と顔色ひとつ変えずに頷いた。
「知ってる、ずっと前から」
なあに。
知らないフリして楽しんでたくせに。
許容範囲の端の傍。
先にすきになった方が負けとか謎理論、本当だったとか認めたくない。
「もう否定しないでよ」
恋も私も、本気度も。
どれほど裏切られたと思ってるの。
なんて、僻み根性と悔しさが成す面倒臭い情の末、伝えた音以上に私を見てよ。
近江が、苦笑を、浮かべて。
「してないよ。僕はちゃんと、わかってる」
「……じゃあもっとわかって」
「わがまま」
「きみの方が、わがまま」
「そー、だね」
いつから。どこから。気づいて、気づかないフリして。
楽しかった。
って、顔してるけど、近江だけじゃなかった。
先にすきになった方が負け。それを認めるのは、私じゃなくて、きみでもなくて。
同時。
「こんなのもう要らないでしょ?」
って、言ったのはどっちか知りたくない。
でも知って。
私はきみに自分のスマホを渡した。
きみは私の手にある眼鏡を笑った。
「要らない」
もう要らない。不必要。
同時に投げ捨てて、きみだけでいいよ、とか。
言うつもりのつめたい間。
今度はきみの影が、最初に近づいて。



