昇降口へ向けて歩き出したところに、


「げ」


廊下の向こうからゴリ松が走ってくるのが見えた。どうやらかなり慌てているらしく、今度は突然身を翻して逆方向へ走り去ってしまう。


……私に気づかなかったのかな?


とりあえず、ゴリ松に見つからなかったのは好都合だ。


でもこのまま昇降口に向かえば、ゴリ松とすれ違うことになってしまうだろう。それではせっかくの幸運が無駄になる。


遠回りをして向かえば? 考えてみたけど、そのルートでは結局旧校舎を通らなければならない。


……はぁ。


これは神様が「提出物を出せ」と私に言っているらしい。


そんなことをいちいち強制してくるなんて心の狭い神様だと思ったけど、口に出したら余計に不幸が訪れそうなので黙っておく。


神様を信じる敬虔な私は、おとなしく旧校舎へ向かうことにした。