失恋した。


それを知ったのは突然のことだった。



君のとなりに誰かがいた。


君のとなりにいる誰かが君を愛していた。



私は自分が情けなくなる。


変な絵空事を抱いていた


自分が恥ずかしくて、


情けなくて、悲しくなる。



そして、私は天高く旗を掲げた。


これは、手を引き、降伏する。


そして、この失恋を


乗り越えてみせるという宣言である。



旗の色は白。汚れなき白。


そして真ん中には日の丸。



これは政治的思想を主張するわけでも、


愛国心をアピールするわけでもない。



この真ん中の日の丸の赤は血の赤。


丸の形は心に空いた穴である。



しかし、この痛みを乗り越えて、


日の昇る地へと辿り着くという意味である。



重い体を引きずって私は歩き出す。



胸が痛い。苦しい。


常に目に涙が滲み出す。



失恋の悲しみが、痛みが、私を襲う。



何度も足を止め、振り返る。


君のことが恋しい気持ちはまだ消えない。



それでも、なお歩き続ける。


涙を何粒も落としながら、


暗闇の中を歩き続ける。



プライドも心もボロボロだ。


自分で自分がみっともない。


自分で自分がカッコ悪い。



何日も何日も歩き続ける。


君は私が失恋したことを知らないまま、


前に進むのを邪魔し続ける。



だけど、もう振り向かない。



今だけは、強く生きる。



大げさな言葉で自らを鼓舞し、


一歩ずつ、確実に前へと。



気の遠くなるような時間だった。



息をしているだけでも苦しかった。



死んだほうが楽だとさえ、思った。



こんなにも、人を強く想ったのは、


初めてだったから。



失恋で、こんなにも苦しかったのは、


初めてだったから。



そして、私は最果ての地に辿り着く。



もう、君はどこにもいない。


遠くへ、遥か遠くへ私は来た。



地平線から日が昇る。


暗闇が光に照らされる。


私は天高く旗を掲げた。



ようやく、ここまで来た。


本当に辛かった。悲しかった。



でも、私は乗り越えた。


失恋を乗り越えてここまで来た。



頬を伝っていた涙も乾いた。


胸の痛みからも解放された。



これで良かった。


これで良かったんだ。



私は昇る日の光を全身に浴びながら、


まだ見ぬ世界が広がっているであろう


地平線の先を見つめていた。