小百合はいつからか、凉のことが好きになってしまっていた。イケメンで、明るくて、意地悪だけど優しい。そんな凉に小百合は何度もドキドキさせられている。

しかし、心の奥底ではわかっているのだ。この想いが届くことはないということをーーー。

チャイムが鳴ったと同時に小百合と凉は教室に入る。ギリギリセーフだ。しかし、クラスメートや先生の目が痛い。

「オッ!夫婦揃って遅刻ギリギリか〜?」

「もしかして、二人でイチャイチャしてたから遅れたんじゃ……」

男子数人がからかってくる。小百合は「やめてよ〜」と笑い、凉もすぐに「コイツとはただの幼なじみだ!」と否定する。凉の言葉に小百合の胸に傷ができた。

凉の目線の先には、騒ぎ続けるクラスメートたちを無視して本を読んでいる女子生徒の姿がある。セミロングの綺麗な髪に白い肌の綺麗な女の子だ。自分にはないものを持つその子に、小百合は悲しくなってしまう。

彼女の名前は甲田英玲奈(こうだえれな)。凉の好きな人だ。