私は早めに起きて薄いメイクして髪型を少し変えて鏡を何度も見返していた。
「髪型よし。メイクよし。笑顔よしと」
まじないのように何度も何度も鏡をみながら唱える。
そんなことをしているとお母さんから声をかけられる。
「渡川くんっていう子が家に来てるわよ」
その言葉に私は待ってましたと言わんばかりに勢いよく玄関の扉を開ける。
「っと」
まさか、こんなに近くに彼がいるとは思わなくて思いっきりぶつかってしまった。
「思いっきりぶつかったけど大丈夫か?」
「う、うん。ごめん」
そう言って顔を上げると彼の顔が目の前に現れた。
「な!」
瞬間的に彼から距離を取る。
あんなに近くで顔見た事なかったから心臓が爆発しそうだった。
やっぱり整った顔をしていてかっこいい。
「優実、可愛くなった?」
ああ、ずるい。
もう心臓が爆発してもいいやって思うほどにずるい。
そんなことを平気な顔して言える彼が憎たらしい。
「そ、そうかな?ちょっとメイク頑張ったからかな?」
こっちも平気を保つために精一杯の言葉を紡いでいく。
「それもあるかもしれないけど、髪型も変えただろ?」
少ししか変えていない髪型にすぐに気がついてしまう彼に惚れない人など居るだろうか。
彼は私の髪型に手を伸ばそうとすると途中で手を止めた。
「?」
「髪型崩れるから、撫でるのはやめておくよ」
そう言って彼は歩きだそうとする。
「ちょっと、まってよ!」
もし髪型を変えなかったら頭を撫でて貰えたんだろうか。
そんな考えはしないでおこう。
それでも、明日からはまた普通の髪型に戻そうと考える自分がいた。
