私は高校生になった。


あれから彼とは違う中学校になり全然会っていなかった。


別の高校に通っていたが友達から彼が通っている高校を聞きつけて転校を希望した。


親から散々理由を聞かれたが適当に答えそのまま転校は許可された。


今から教室に入るところだ。


高校生になってから髪型や容姿を気にするようにしてきた。


可愛いって思ってくれるかなって期待してる部分もある。


扉の前に立つと少し緊張してしまう。


これが久しぶりに会う彼との再会のためかただ新しいクラスに馴染めるのか心配なためかよく分からない。


「転入生よ、入ってちょうだい」


考えをまとめる前に先生に呼ばれる。


私は教室に入ってすぐ彼を探したが昔とは顔が変わっているからかよく分からなかった。


黒板の前に立つと自己紹介を要求される。


少し緊張しているのか心臓が早く動く。


「雪本 優実です。訳あって転校してきました。皆と仲良く慣れるように頑張ります。よろしくお願いします」


少し早口だっただろうかと不安になったが静かだった教室に拍手が流れて不安がかき消される。


「席はあの瀬戸くんの隣よ」


聞き間違いだろうか?


瀬戸という苗字に妙に敏感になる。


それは嫌な人の記憶だったから。


先生が指さす方向を見ていると何故か悪い顔をしている人物と目が合う。


隣まで来るとその人物は私に話しかけてくる。


「お前って、あの雪本か?」


嫌な予感が当たってしまった。


近くに来ると昔の面影があるけど声変わりをしたのかより怖く感じる。


「なんだその顔、忘れたのか?あんなに可愛がってやったのに...?」


その言葉に私は吐き気がした。


また地獄という日々が始まってしまうんじゃないという不安が押し寄せる。


息が詰まっていると私の前の後ろの席の子が話しかけてきた。


「優実か?」


この声で不安だった心に一気に暖かい何かが入ってきた感覚になった。


「弘くん?」


顔を見ると全然変わってなかった。


いや、大人ぽくなっていてそれでいて優しい彼の笑顔がそこにあった。