あれから彼は部活に入部することになった。
もちろん先輩から誘われたっていうのもあるらしいんだけど彼には別の理由があるらしい。
教えては貰えなかったわけだけど。
春風が吹いていた教室は少し蒸し暑く感じる。
そろそろ雨が降る季節になるし夏も近づいているからみんな腕を捲ったりノートをうちわ替わりにしている。
私も長い髪をポニーテールにしたり対策はしている。
最後の授業中に後ろから声をかけられる。
先生も今日は暑かったのか参ってしまっていてこちらのことなど気づかない。
「ポニーテールか。あんま見たこと無かったけど似合ってるな」
前を向いていて顔は見えないけど私の顔はきっと変な顔だろう。
自分でも嬉しくて口元がつり上がっているのが分かる。
「そ、そうかな?今日は暑いからね」
可愛さの欠片もない答えに自分でも幻滅する。
「こっち向いてみな」
授業中だけれど私も彼の表情が気になって後ろを振り向く。
「ほら、やっぱり可愛い」
そう言って頬杖をついた彼がいた。
「え、あ、ありがとう」
動揺が分かりやすいくらい声に出てしまった。
その後、先生に怒られたのはまた別の話なわけで。
