体育館に来るのは授業以外なかなかない。
スポーツができる訳でもないし昼休みはほとんど男の子がたむろする場所だし。
「お〜来てくれたか!」
広い体育館に大きな声で呼びかける男の子の声が響く。
「お誘いありがとうございます、先輩」
丁寧に挨拶する彼を見ていると私の方にも声がかかる。
「あれ?その女の子、渡川くんの彼女?」
「彼女!?」
予想外の言葉に大声が出てしまう。
やってしまったという気持ちが襲いかかる。
「違いますよ。彼女とは同じクラスってだけです」
そう言われて胸の辺りがズキズキするのを感じる。
分からないこの気持ちに何故か苛立ちを覚える。
「そうなの?でも、女の子を連れてくるってそういう事だと思ってたけど」
先輩も先輩で余計なことを言わないで欲しいと口には出さないけど思っている。
「まぁいいや。じゃあ、渡川くんの実力見せてもらおうかな」
そう言って彼にボールを投げる。
彼は簡単にそれを取り器用にそれを地面に打ち付ける。
私は彼の試合を体育館の隅で見ていた。
彼は先輩三人相手にも通用する上手さとコントロールでその場を圧倒していた。
ボールの音と応援する人々の声を聞きながらやっぱり彼って凄いんだって実感する。
髪をかきあげている彼を見たり楽しんでいる彼を見たりボールを取られて悔しそうにする彼を見ると胸がドキドキする。
そんなこと考えているといつの間にか体育館の扉には女の子がちらほらいた。
その視線の先にいたのは多分カレ。
今の彼は誰だって魅力する程に輝いていて眩しすぎるから。
胸がドキドキしたりズキズキしたりと今日は忙しい気がする。
「優実?」
胸を押さえていると彼が近くに来ていることに気づかなくて驚いてしまう。
「え!なに?」
「一応、1ゲーム終わったから声かけたんだけど何か考え事してた?」
今彼の顔を真っ直ぐ見れない。
それにあの女の子達の視線が痛い。
「ううん、なんでもないよ!私やっぱり用事が出来ちゃったから帰るね」
そう言って彼の横を通り過ぎた。
後ろから気をつけて帰れよっていう言葉を聞いて余計モヤモヤしてしまった。
