「最近はスイーツ好きを公言する男性が増えてるから、ボリュームありのものをあと数点加えてもいいと思うんです。パフェの器を一回り大きくしたり、チョコレートケーキをサークルごと提供するとか」
「えー、俺は絶対に無理ですよ。チョコレートなんてひとかけ食べるだけで精一杯。甘いものは基本的に苦手なんで」

梨乃の提案に眉を寄せ首を横に振る後輩の小野に、梨乃は苦笑した。

「小野君の得手不得手は聞いてないから。自分の好みを企画に影響させるなんて論外。世間の流れをフラットに考えなきゃ、いい企画は作れないよ」
「わかってます。でもチョコレートケーキをまるごとなんて、考えただけで胸やけがします」

小野は手元の企画書に目を通しながら「無理無理」とつぶやいている。

「小野の好みはさておき、男性の好みを取り入れるのはいいんじゃないか?」

部長の木下の声が、会議室に響いた。

「ターゲットを女性同士で訪れるお客様に絞ると集客に限界があるからな。恋人同士や男性同士でも楽しめるラインナップを考えたほうがいい」