毛布にくるまり、自意識過剰な自分に苦笑する。

「まさか侑斗さんとなにかが起こるなんて、考えるだけ無駄なのに」

今夜、侑斗は気の置けない友人の店でラーメンが食べたかっただけに違いない。
たまたま時間が合った梨乃をそこに連れて行っただけ、それだけだろう。
 夜道や暗い場所を怖がる梨乃を心配してくれたのも、ひったくりに遭った直後の梨乃を知っているからに違いない。
そこに特別な感情などないと、落ち着いて考えればわかるはずなのに。

「恥ずかしい……」
 
どこまで自分は侑斗を意識していたのだろう。
梨乃はあまりにも恥ずかしくてベッドの中で体を丸めた。
その途端、侑斗の胸の中で感じた柑橘系の香りを思い出した。
暗い夜道に落ち着かない梨乃を抱きしめた侑斗の腕の感触もよみがえる。
ときどきジムに通っているだけあって服の上からでも容易にわかるたくましい体。

「頼りがいがありそうな体だったな……やだやだ、忘れなきゃ」
 
梨乃は思い出してはドキドキする自分を持て余し、寝返りを打っては落ち着こうしたがうまくいかず、明け方近くまで抱き枕を胸に抱えて悶々とした。
梨乃は再びこの先やっていけるのだろうかと不安を覚えたが、〝逃げられないぞ〟と言った侑斗が見せた優しいまなざしが浮かび、思いがけず胸が高鳴った。