侑斗と出会って以来がらりと変わった日々を思い返し、梨乃は肩を落とした。

「でも……」
 
梨乃は思い直す。
侑斗は道鏡以来必要以上に梨乃の生活リズムに立ち入らずほどよい距離感で気を配ってくれていた。
おかげで緊張ばかりのスタートだったが、梨乃は徐々に心地よさを感じ始めていた。
それに、予想していた以上に侑斗は忙しく帰宅後も毎晩遅くまで仕事をしている。
時差のある海外との打ち合わせで流暢に英語を話す横顔に見とれて家事が手につかなくなったりもしたが、別々に過ごす時間が多いおかげで必要以上に侑斗を意識せずに過ごしてきた。
けれど今晩、侑斗はこれまでとは別人のような表情を見せ、思わせぶりな言葉で梨乃を追いつめた。
それなのに、電話一本で侑斗はあっさりと背を向けた。
梨乃はその後、熱い湯船の中でも考えるのは侑斗のことばかり。
ふと気づけば体中が真っ赤でのぼせる寸前。
慌てて入浴を終え、冷たい水で体と頭を冷やした。
そっと侑斗の部屋を覗くと、侑斗は着替えもせず難しい顔でパソコンに向かっていた。
よっぽど大変な状況なのかもしれないと思い、梨乃はなにも言わず自分の部屋に戻ってベッドにもぐりこんだ。