溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

「あの。自分では気にしないようにしているつもりなんですけど、やっぱり夜道は怖いかも……」
 
あまり深刻にならないよう笑みを浮かべるが、実のところ梨乃は夜道でなくても暗い場所にいると不安を覚えるようになった。
こうして侑斗の側にいても、無意識に辺りを気にしながら歩いている。

「大丈夫だ。なにかあったらちゃんと守る。安心しろ」
 
守るとか安心しろとか。侑斗の優しい言葉が耳元に響き、梨乃は泣きそうになるのを隠して笑顔を向けた。

「まだ体に少し傷跡はありますけど痛みはなくなったし。そのうち夜道も平気になると思います。それに、あのときはぼんやりしていた私も悪いから」
「ばか。平気になってどうする。いや、怒ってるわけじゃない。……泣きそうな顔をするな」
 
堪えたつもりが、泣きたい気持ちは隠せていないらしい。
梨乃はくしゃりと顔を歪めた。
侑斗は梨乃のその顔を見るや否や、掴んでいた梨乃の手を引き寄せ抱きしめた。

「あ、あの侑斗さん……?」
 
突然、侑斗の胸に押し付けられ身をよじるが、侑斗は梨乃の肩に顔を埋めるように体をかがめ、大きく息を吐き出した。