溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

その口調はお願いするというよりも単に結論を述べているようで、梨乃はなにも言い返せない。
目の前の侑斗の顔をただ見つめるだけだ。

「梨乃の生活を守るし大切にする。だから、今日から梨乃は俺の婚約者だ。いいな」

侑斗は困り切って目を丸くする梨乃に笑顔を向ける。
そして「婚約成立の証だ」とつぶやくが早いか、梨乃の額に優しく口づけた。


その後侑斗と同居を始めて2週間が経ち、梨乃はようやくその暮らしに慣れてきた。
ふたりとも仕事の帰りが遅く基本的には梨乃が食事の用意をするのだが、朝食はふたりで食べ夕食はそれぞれ帰宅してから食べることにしている。
けれど、梨乃はたいてい侑斗の帰りを待ち一緒に食べている。
同居初日は侑斗とひとつ屋根の下だと思うと緊張しなかなか寝つけなかったが、梨乃に用意された部屋の整理も終わった今は寝心地抜群のベッドに体を滑り込ませた途端夢の中。
自分は意外に心臓が強いのかもしれないと、梨乃は感じている。
ただ気がかりだったのは、初めてのひとり暮らしに苦労しているだろう翔矢のことだ。
けれど、その心配も杞憂だった。