そこは大きな窓から入る日差しが眩しい広い洋室で、ベッドやサイドテーブルが置かれ、奥には小部屋が見える。

「奥のウォークインクローゼットに梨乃の荷物は入れておいた。今まで使っていた家具や電化製品は翔矢君と相談してほとんどを処分したし、うちの弁護士がマンションの契約解除の手続きを始めているから問題ない」
「はあ……」
「翔矢君が住むマンションも荷物の搬入は終わってるから安心していい。家政婦の吉川さんは料理上手な優しいばあちゃんだ。翔矢君の世話をするのを喜んでる」
 
部屋を案内されながら侑斗の言葉に耳を傾けるも、梨乃はこの展開についていけずにいた。
午前中の検査で打撲と挫傷以外なにも異常はなく退院の許可がおりた。
仕事の区切りをつけた侑斗が病院まで迎えに来たかと思うとさっさと入院費用の清算を済ませ、自分のマンションに梨乃を連れて来たのだが、どう考えてもこの流れはおかしい。
梨乃は病院を出た後押し込まれた車の助手席で何度も「入院費用はお返ししますし、自宅に帰してください」と訴えたのだが、結局こうして侑斗の自宅に連れてこられた。