「とにかく翔矢が大学を卒業するまでは頑張らないと」
そう言って自分を励ますが、予備校の特別講習の費用の振込期限が近かったと思い出し、疲労感がさらに増したような気がした。
そのとき、前方の角から黒い影が飛び出してきた。
「えっ、なにっ」
梨乃は急いでよけようとするが、街灯頼みの暗い中ではそれも難しく、気づけば全身に強い衝撃を受け、地面に倒れていた。
「金を寄こせ」
かすれた男の声と舌打ちが聞こえたかと思うと、腰に鋭い痛みを覚えた。
ぶつかった男に蹴られたようだ。
「いた……」
梨乃は恐怖と痛みに耐えながら体を小さくし、とっさに身を守ったが、頭上から手が伸びたかと思うと、両腕に抱えていたバッグを取り上げられそうになった。
「な、何をするんですか」
「ちっ、それを寄こせよ」
強い力でバッグが引っ張られ、梨乃は必死でそれを胸に抱え込んだ。
そしてそのまま地面にうつぶせになり、さらに体を丸めた。
その時になってようやく、自分はひったくりに襲われたのだと気づいた。
「面倒をかけるな、くそっ」
そう言って自分を励ますが、予備校の特別講習の費用の振込期限が近かったと思い出し、疲労感がさらに増したような気がした。
そのとき、前方の角から黒い影が飛び出してきた。
「えっ、なにっ」
梨乃は急いでよけようとするが、街灯頼みの暗い中ではそれも難しく、気づけば全身に強い衝撃を受け、地面に倒れていた。
「金を寄こせ」
かすれた男の声と舌打ちが聞こえたかと思うと、腰に鋭い痛みを覚えた。
ぶつかった男に蹴られたようだ。
「いた……」
梨乃は恐怖と痛みに耐えながら体を小さくし、とっさに身を守ったが、頭上から手が伸びたかと思うと、両腕に抱えていたバッグを取り上げられそうになった。
「な、何をするんですか」
「ちっ、それを寄こせよ」
強い力でバッグが引っ張られ、梨乃は必死でそれを胸に抱え込んだ。
そしてそのまま地面にうつぶせになり、さらに体を丸めた。
その時になってようやく、自分はひったくりに襲われたのだと気づいた。
「面倒をかけるな、くそっ」

