溺愛は蜜夜に始まる～御曹司と仮初め情欲婚～

それに、セキュリティに問題があるからと心配し、早く引っ越すようにと忠告した侑斗の真剣なまなざし。
どれもこれも梨乃の心に深く残ったままだ。

「だけどこの写真はまずかったわよね。普段あまり感情を顔に出さない侑斗さんが優しく微笑んでるもん。こんなレアな写真が拡散しちゃって……ご愁傷様」

スマホの写真に向かって冗談めかして手を合わせる千紗に、梨乃は顔をしかめた。

「たしかにレアだとは思うけど……」

梨乃は千紗のスマホに再び視線を落とし、レアだと言われる侑斗の笑顔を見る。
そこにはスタイル抜群のスーツ姿で笑みを浮かべている侑斗。
少し離れた場所から撮ったのか、画像は荒いが侑斗の端整な顔に浮かぶ笑みは、どう見ても格好いい。
けれど、翔矢と車の話で盛りあがっていたときに見せた笑顔の方がもっと素敵だなと、梨乃は思い返す。
高校生の翔矢とまるで変わらない笑顔で話を弾ませていた侑斗の格好良さに、ときめいたのだ。
それに、侑斗のプロフィールに興味がなかったと言った梨乃に驚き、一瞬見せた拗ねた表情。
どれもこれも、思い出すと何故か落ち着かなくなる。