溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

「これよ、この写真。うちの部署の女の子がたまたま撮ったらしいんだけど。先週から女性従業員たちに拡散されて大騒ぎ。で、本当のところどうなの?」
「どうって……え? どうしてこんな写真を千紗が持ってるの」

もったいぶった声とともに千紗から手渡されたスマホには、ホテルの地下駐車場で侑斗の車に乗り込む梨乃が映っていた。
おまけに助手席のドアを開き、優しく梨乃を見つめる侑斗の姿までもがはっきりわかる。

「こ、これは、何でもないの。私の不注意で侑斗さんにぶつかってね、スマホが壊れちゃったし、この日翔矢の面談があって急いでたから、それで」
「はいはい。落ち着いて。そんなに焦ってたら余計に怪しまれるわよ」

千紗は必死で弁解する梨乃をなだめながら、肩をすくめた。

「真実はどうであれ、侑斗さん狙いの女性社員がこの写真を見たら梨乃にいい感情は持たないよね。社長が結婚して、白石家の独身男性は侑斗さんだけだから、梨乃をやっかむのも仕方ない」
「そんな……たまたまあの日は侑斗さんが車で翔矢の学校まで送ってくれただけなのに」

梨乃は食べ終えたお弁当箱をしまいながら、肩を落とした。