溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

どこか不機嫌な声は、梨乃の母が翔矢の学費と引き換えに結婚しちゃだめだと言うのを聞いていたからだ。
翔矢から事情を聞いて心配する母の親心は理解できるが、梨乃を愛している侑斗は心外だとばかりに怒りだす……こともできず拗ねてしまった。
今も梨乃の母の言葉を引きずっているのか、急かすような口調で結婚と口にする。
その子どもじみた侑斗が愛しく、梨乃はお腹に回された侑斗の手に自分の手を重ねた。

「金で梨乃を買ったみたいじゃないか……そんなわけあるか。なにがなんでも梨乃が欲しいから作戦を練っただけで、それのどこが悪いんだよ」

梨乃の耳もとでぶつぶつと文句を口にする様子にも思わず笑いがこみあげてくる。

「結婚なら私はいつでもいいですよ。明日でも大丈夫です……あ」

口を突いて出た自分の言葉に、梨乃はそれが本音だと感じた。
同時にこれまで感じたことのない幸せがじわじわと体を満たしていく。
ともに生きる未来を望んでいるのは侑斗だけじゃない。
梨乃も侑斗を愛している。
翔矢の学費と引き換えに侑斗と結婚しようとしているわけではない。
ただ侑斗を愛している、