溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

村野が侑斗のマンションにやって来てまで梨乃と侑斗を別れさせようとした件を、諒太は尾崎から聞いて知っていた。
今夜スイートに泊まるのは、本来なら事前に防げたはずのトラブルに巻き込んでしまった梨乃へのお詫びなのだ。

「お詫びでもなんでも、梨乃と一緒ならどうでもいい」

侑斗はいつの間にか梨乃の傍らに立ち、背後から梨乃を抱きしめた。
肩に侑斗の顎が乗せられ、そのくすぐったさに梨乃は身をよじった。

「侑斗さん、ワインはもういいんですか?」
「ワインよりこっちがいい」

熱い吐息を襟足に感じ、梨乃の体がぶるりと震えた。
侑斗が飲んでいたワインをほんのひと口飲んだだけで酔ったのかもしれない。

「今晩、お母さんは藍香さんの実家に泊まるって?」
「びっくりですよね。藍香さんのおじい様が是非にとおっしゃったそうで」

結局、梨乃の母はレッスンを終えた後藍香の実家に招かれ、そのまま泊まると連絡があった。
元総理である藍香の祖父は藍香を溺愛していて彼女が子どもの頃にはピアノの発表会を見に来ていたそうだ。
そのときに梨乃の母と知り合い親しくしているらしい。