溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~



「だからといって私たちまでこんな素敵なお部屋に泊ってもよかったんですか?」
「いいんだよ。これで本格的なフランス進出に弾みがついたんだ。スイートルームに一泊するくらいどうってことない」
「でも……なんだか現実味がなくて。まさか自分がスイートに泊まるなんて夢みたいです」

梨乃は窓際に立ち眼下に広がる夜景を見下ろした。
そろそろ日付が変わる深夜だというのに、大通りにはテイルランプの列が規則正しく並び、遠目に見えるビル群のきらめきに目を奪われた。

「ホテルを外から見上げるばかりで中から見下ろすなんて初めて。母さんがお姫様気分と言ってたのも納得です」
くもりひとつない磨きあげられたガラス窓越しに見える世界は想像以上。
室内も広く調度品も装飾品も、そしてスイート限定のアメニティも極上。
自分の職場で商品でもある室内に感激しっぱなしというのもどうかと思うが、初めての経験に梨乃の心は沸き立ち足もとが地についていないようにふわふわしている。

「私がお姫様なら侑斗さんは王子様……というより王様ですね」

それも周りを振り回して思うがままに事を進める王様だ。
聞かせるわけでもなく独り言ち、梨乃は肌触りのいいバスローブの着心地の良さに満足のため息を吐いた。
文字通りお姫様気分だ。

「この間、お母さんとの電話でセミスイートに泊まるなんて羨ましいって言ってただろ? そのとき、仕事が落ち着いたら梨乃とスイートで過ごそうと思ってたんだ。まさか今日諒太から梨乃への詫びも兼ねてスイートに泊まれと言われるとは思わなかったけどな」
「お詫びなんて……いいのに」