ふと侑斗が振り返り、梨乃に向かって小さな笑みを浮かべた。
梨乃にだけわかる意味ありげな甘い笑顔……。
出会った当初、梨乃はここまで侑斗を好きになるとは思わなかった。
昨夜も大切に抱かれた体の奥がじわり熱を帯び、何度もささやかれた甘い言葉がよみがえる。
梨乃の全身を探り、知らない場所をなくそうとするように這う侑斗の指先と唇の熱に声をあげさせられ、幸せをかみしめた……。
それを手放せるのか、梨乃には自信がない。
侑斗への愛情を今更なかったことになどできそうもない。
それでも侑斗の願いを叶えられるのならば、村野の要求をのむよりほかないのだろうかと、梨乃は悩み続けた。
「え……?」
会場に近づくにつれ、ピアノの旋律が聞こえてきた。
午前中に終わるはずの調律が間に合わなかったのかと梨乃は焦ったが、耳馴染のあるメロディーを耳にし、そうではないと察した。
会場にいる誰かが勝手に弾いているのだろう。
「すみませんっ」
最後尾にいた梨乃は、頭を下げつつ一行の横を足早にすり抜け、会場へと向かった。
その間もピアノの音が途切れることはない。
「この曲って……」
聞けば聞くほど確信する。
梨乃にだけわかる意味ありげな甘い笑顔……。
出会った当初、梨乃はここまで侑斗を好きになるとは思わなかった。
昨夜も大切に抱かれた体の奥がじわり熱を帯び、何度もささやかれた甘い言葉がよみがえる。
梨乃の全身を探り、知らない場所をなくそうとするように這う侑斗の指先と唇の熱に声をあげさせられ、幸せをかみしめた……。
それを手放せるのか、梨乃には自信がない。
侑斗への愛情を今更なかったことになどできそうもない。
それでも侑斗の願いを叶えられるのならば、村野の要求をのむよりほかないのだろうかと、梨乃は悩み続けた。
「え……?」
会場に近づくにつれ、ピアノの旋律が聞こえてきた。
午前中に終わるはずの調律が間に合わなかったのかと梨乃は焦ったが、耳馴染のあるメロディーを耳にし、そうではないと察した。
会場にいる誰かが勝手に弾いているのだろう。
「すみませんっ」
最後尾にいた梨乃は、頭を下げつつ一行の横を足早にすり抜け、会場へと向かった。
その間もピアノの音が途切れることはない。
「この曲って……」
聞けば聞くほど確信する。

