溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

その後藍香たちはまず宴会場に足を運んだ。
白石ホテルでもっとも広い会場で、著名人の結婚式やパーティーを催す機会も多い。
今回もかなりの人数の招待客が予想されることからこの部屋を用意し、本番を想定した装飾を施すとともにサロンから運び入れたグランドピアノも置かれている。
梨乃は一行とともに会場があるフロアに来たのだが、少し前を歩く侑斗の後ろ姿を複雑な思いで見つめた。
村野に投げつけられた言葉がやはり気になるのだ。
婚礼部からの説明に興味津々で耳を傾ける藍香と恭介の様子を見れば村野の言葉をうのみにはできないと思うが、もしも本当に白石ホテルが候補から外されているのならば侑斗は相当落ち込むだろうと、胸が痛い。
白石ホテルの今後の展開を考えればどうしてもつないでおきたい縁。
それを知っているだけに、村野の言葉ひとつに浮足立つ必要はないと思いながらも心が乱れてしまうのだ。
もしも侑斗と別れ、そしてホテルを辞めれば。
侑斗の願いは叶うのだ。
それこそ梨乃の心ひとつで。

「でも……」

梨乃は再び侑斗の背中を見つめた。途端、心臓が強く鼓動を打つ。