溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

「もしもし、母さん? 久しぶり、元気にしてる?」
『元気よー。こっちの水が合ってるのか喘息もおさまってるし絶好調』

聞きなれた陽気な声が聞こえ、梨乃はくすりと笑った。

「ねえ、そろそろこっちに出てくる頃でしょう? 宿泊の予約はしたの?」
『そうなの、そのことで電話したのよ。ふふっ、びっくりしないでね。な、なんとっ。今回はセミスイートを予約してくれたの。すごいでしょう?』
「え、セミスイート? それって音楽教室が予約してくれたの?」
『もちろん。今回ね、母さんのレッスンを受けたいっていう生徒さんがいつも以上に多くてね。毎回20人くらいだけど今回は30人に増やしてほしいってお願いされたの。だからそのご褒美のセミスイートなの』

 母がワクワクしているのが声だけでもわかり、梨乃も自然と表情が緩む。母と話すといつもこうだ。
音楽が大好きで、夢見がちな少女のまま大人になったような女性。
梨乃の自慢の母親だ。

「うちのセミスイートってとても素敵なのよ。、私も泊まったことがないから羨ましい。それに一週間連泊でしょ?」