溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

「尾崎さんが来てくれなかったらいつまで村野さんに捕まっていたか……助かった」

エレベーターに乗り込んで侑斗とふたりきりになったとき、梨乃はふっと息を吐いた。

「住人のために飛んできてくれるなんて。コンシェルジュさんって頼りになるんですね」
「尾崎はもともとうちの実家で20年以上働いてたんだ。だけど去年親父がこのマンションを建てて以来ここでコンシェルジュとして楽しんでる。うちの両親から梨乃は俺の婚約者だから気を配れと言われたようだな。これからもなにかあれば頼ればいい」
「え、じゃあこのマンションは侑斗さんのお父さんが所有しているってことですか?」
「そう。父親の個人資産。ちなみに向かいの通りには諒太の父親のマンションが建ってる。あの兄弟も仲がいいんだよ」
「そう、ですか」
 
梨乃は驚き声を裏返らせた。
外観も内装もすべてが高級仕様でさすが御曹司の部屋だと思っていたが、部屋どころか一棟全部が侑斗の実家のもののようだ。
高級ホテルグループの創業家ともなれば、マンションだけでなくほかに所有している不動産はまだまだあるかもしれない。