溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

村野が梨乃を訪ねてきたと侑斗に伝えるつもりでいたが、別れてほしいと言われたことや沢渡家の結婚式の件はどこまで言うべきか決めかねていたのだ。
そんな梨乃の戸惑いに構わず、尾崎は両手をポンと合わせ思い出したように再度口を開いた。

「私の方が侑斗につりあっているしふさわしいのよ。とっとと別れて出て行きなさい。折原様に向かって、そうおっしゃってました。以上です。それでは業務に戻りますので失礼いたします」
「尾崎さんっ」

慌てる梨乃にも深々と礼をし、尾崎はマンションへと戻っていった。
細身で長身のロマンスグレー。
コンシェルジュらしい立ち居振る舞いは申し分ないが、そこまで忠実に侑斗にぶちまけなくてもいいのにと、梨乃は肩を落とした。

「本当か? 別れろだの出ていけだの言われたのか?」

ぼんやりと尾崎の後ろ姿を見ていた梨乃の両肩に手を置き、侑斗は問いかけた。

「……はい。言われました。それに、侑斗さんを幸せにできるのは自分だと胸を張ってましたよ。あ、侑斗さんを政界に送り込んで自分はファーストレディーになるとも」

侑斗にごまかしは通用しないとあきらめ、梨乃は渋々答えた。