溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

首をひねる梨乃に、村野は煩わしそうなため息を吐いた。

「面倒な女ね。私の判断ひとつで沢渡家の結婚式を引き受けられるんだから、侑斗さんのためにさっさと別れなさいよ」
「別れる……?」
「そうよ」

心細い声をあげた梨乃に、村野はここぞとばかりに詰め寄った。

「私が白石ホテルを推せば、大臣はふたつ返事で決めてくれるはず。侑斗さんが海外進出のために政界や海外とのつながりを増やそうとしているのは知っているのよ。それをサポートできるのはあなたじゃない。私よ」
「あ……」

侑斗が沢渡家の結婚式を白石家で引き受けたい理由はまさにそれだ。
今後の海外展開が有利にすすむよう受注に向けて奔走し、深夜でも社長の諒太や経営企画室の面々とリモート会議を重ねていた。
その忙しさは相当で体調を壊さないかと梨乃は心配しているが、彼女自身も仕事となると寝食を忘れて集中してしまう。
だからこそ、侑斗の仕事への思いが理解できるのだ。
侑斗が社長になりたいと考えているとは思えない。本人もそう言っていた。
梨乃はすっと顔を上げ、村野に向き合った。