溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

今日もまた侑斗に振り回されている。
梨乃は仕方がないとあきらめた。
というよりも、この強引さにこれ以上甘えていいのだろうかと切なくなった。
梨乃の意志を無視し、自分の思うがままに突き進むわがまま御曹司。
出会った当初、梨乃は侑斗をそう思っていた。
もちろんそれはまったくその通りで、侑斗自身も自覚しているはずだ。
けれどそれだけではないと、梨乃は気づいていた。
たしかに侑斗は梨乃を振り回しているが、侑斗になんのメリットもない。
半ば強制的に梨乃を自分のマンションに住まわせたり、翔矢にも生活のサポートをしたり。
決して少なくない費用を負担しただけで侑斗にはなんの見返りもないのだ。
それに梨乃の抵抗を無視してふたり揃って出勤したのも、中途半端な噂が広がり梨乃の仕事に影響が出るのを恐れてのことだと、今ならわかる。
侑斗の婚約者だと認識されれば、噂は残るが白石家の一員となる梨乃の反感をかうような直接的な嫌がらせはない。
そのためだけに一緒に出勤しているのだろう。
わざわざ満員電車に乗り込んでまで……。