溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

「ああ。白石家の分家に生まれた男子はそう言われて育つ。もちろん自分の道を見つけて別の職業に就くのもありだけどな。でも俺は社長として指揮を執る諒太が見たかったしあいつをサポートするのが楽しみだったんだ」

迷いのない声で話す侑斗の表情は明るい。
今日社長室でも感じたが、諒太と侑斗には身内以上の信頼関係があるのだろう。
諒太が社長に就任した直後、実は侑斗もその座を狙っていて悔しがっているという噂がホテルの従業員の間に広まった。
諒太に負けず劣らず侑斗の仕事ぶりも評価が高いのだがいつも諒太の後ろに控えている。
立場の違いは大きく、侑斗も社長の座を狙っているという噂が面白おかしく流れたのだ。
それは翔矢との生活を守るだけで精一杯だった梨乃にはまったく興味のない話で、今の今まですっかり忘れていた。

「社長って大変そうですね。今日も私たちが部屋を出た途端秘書の方が待ち構えていたように書類を抱えて飛び込んできて……奥様ともゆっくりできないし、本当、大変。申し訳ないですけど、社長になるのも考えものです」

不憫だとばかりにため息をついた梨乃の顔を、侑斗は面白そうにのぞき込んだ。