溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

けれど次の瞬間、ふと思いついたように表情を変え口を開いた。

「大臣は地元を大切になさっているけど、学生時代からの親友である私の父とも仲がいいのよ。仕事上の付き合いも深いし、もちろん私を子どもの頃からかわいがってくださっているわ」

侑斗に体を寄せもったいぶったように話す村野に、侑斗は冷静に頷いた。

「それが?」
「……頭のいい侑斗さんならもうわかっているでしょう? 今一番重視しないといけないのは経団連の元会長である私の父からの大臣への口添えと、秘書としても親友の娘としても大臣が大切にしている私の最終的な判断。……侑斗さんなら察しがいいからこれ以上言わなくてもいいわよね」

そう言って上目遣いで見つめる村野に、侑斗は鋭い視線を向けた。

「さあ、なんのことかわかりませんね。ですが、お引き受けできるよう今後も精いっぱい努力させていただきます」
「……そう。よっぽど白石ホテルをが大切なのね。だったら尚のこと私の判断が気になるんじゃない? それこそ……ホテルの従業員との婚約を後悔するなんてことがあり得るかもね」

村野はくすくすと声を洩らすがその目は笑っていない。