溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

梨乃が落ち着かない様子でいると諒太と目が合った。
遠目から見ても整っている容姿は近くで見るといっそう見栄えよく、三つ揃いのスーツがよく似合っている。
彫りの深い顔立ちはやはりいとこの侑斗によく似ているが、侑斗よりもクールな印象を受ける。

「村野さん、いい機会ですので彼女を紹介させてください」

諒太が向かいのソファに腰かけている女性に声をかけた。

「侑斗の婚約者の折原梨乃です。当ホテルのあらゆるイベントやフェアの企画を担当しておりますので、今回の件に関しても力になれると思います」

諒太の口から突然自分の名前が出され、梨乃は息をのんだ。

「諒太っ、いや、社長。今回の件に彼女が関わることはありませんから」

怒りを含んだ侑斗の低い声が部屋に響いた。

「独り占めしたいのはわかるが出し惜しみするなよ」

諒太は面白がるようにそう言って、目を細めた。

「あ、村野さんすみません。このふたり、最近婚約したのでからかうと面白いんですよ」
「諒太、いい加減に――」
「侑斗さん、婚約したんですか?」

それまで梨乃たちに背を向けていた村野と呼ばれた女性が立ち上がり、振り返った。