溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

「目の前で俺と梨乃がいちゃついたらイライラすると思うとワクワクする」
「は? いちゃつく?」
「そう。今まで散々見せつけられてきたから、今日はこっちが見せつけてやる」

くくっと笑うと、侑斗は軽くノックすると同時にドアを開いた。

「悪い、待ったか? 梨乃を連れてきたぞ」
「あ、あの、侑斗さんっ」

侑斗に腕を掴まれて転げるように社長室に入った梨乃は、そのまま手を引かれ、部屋の奥に足をすすめた。
初めて入る社長室。
深みのある茶色でまとめられた室内はとても広く、品のいい調度品やソファが置かれている。
愛想のいい笑みを浮かべてソファに腰かけていた諒太と目が合い、梨乃は慌てて侑斗の手を振りほどいた。

「しゃ、社長……」
「あ、折原さん、わざわざ来てもらって申し訳ないが、少し待ってもらえるか? 侑斗、村野さんがいらっしゃってる」
「え? お約束はしていませんが」

軽やかな声から打って変わった侑斗の固い声に、梨乃は顔を上げた。
そのまま侑斗の視線を追うと、諒太の向かいのソファに誰かが腰かけている。
髪をハーフアップにしている後ろ姿を見ると、女性のようだ。