溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

行き交う人々から守るように梨乃の傍らに立ち、見守っている。

「お見合いの話を断るために婚約者の振りを。それに、ひったくりに襲われた私が心配で同居してくれて……」
「それは間違っていないが」
 
自分に言い聞かせるようにつぶやく梨乃を侑斗は抱き寄せた。

「え、侑斗さん?」

梨乃は慌てて顔を上げた。
ここは行き交うひとも多い大通りだ。
恥ずかしくて離れようとするが、侑斗はそれを許さない。

「侑斗さん……ここはホテルからも近いし、見られたらまずいです」
「だったら、見られてもいいようにすればいい」

身をよじる梨乃をさらに抱き寄せた侑斗は、思わせぶりな笑みを浮かべた。

「婚約者の振りをさせているつもりはなかった」
「え? だったらどうして」
「振りじゃない。俺は初めから梨乃と婚約したつもりでいた。正真正銘、梨乃は俺の婚約者だ。これからはそれを自覚してくれ」
「……はあ?」

 一瞬の間を置き、梨乃は力の抜けた声で呟いた。

「そんなかわいい顔をするな。抱きたくてたまらないのを毎晩こらえていたんだぞ」

侑斗は深く息を吐き出し、梨乃の肩に顔を埋めた。