溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

「これまで評判を呼んだイベントの企画書にはたいてい梨乃の名前があった。木下部長も絶賛する期待の若手の名前だ。どんなやり手の女性だと思ってたら、まだまだ学生のような愛らしい女性で、いつも忙しそうに走り回ってる。意外すぎて目が離せなくなった。見かけるたび足を止めて目で追うから諒太にからかわれていたほどだ」

すらすらと言葉を並べる侑斗に驚き、梨乃はこれは現実なのかと首をひねった。

「梨乃との接点が欲しくて木下部長に動いてもらおうかと考えていたら、あの日梨乃のほうからぶつかってきた。まあ、驚いたけど逃がすわけがない。スマホが壊れたのをいいことに車に押し込んだ」

面白がる侑斗の顔を呆然と見ながら、梨乃は目を丸くした。

「あ、あの。それって……侑斗さんはやっぱり以前から私を知っていて……?」
「そうだな。この3年ほどは梨乃の名前で社長決裁があがってくるたびわくわくしたし、ホテルで働く梨乃を見るのは楽しかった」

 しれっとそう言って笑う侑斗を、梨乃はぽかんと眺める。

「さ、3年……単なる従業員の私をそんなに長い間……」

どうにかそう口にした梨乃の手を、侑斗は再び掴んで歩きだした。