溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~

丸テーブルが八つほどそれぞれかなりの距離をとって並んでいるが、遠目に見えるキレイな女性は有名女優であり、反対側に見えるテーブルに着いている男性は最近大きな賞を受賞した作家だ。

「なんだか場違い……」

梨乃はベージュのあっさりとしたワンピース姿の自分を見下ろし、これほどの高級店に連れて来るのなら、最初から言っておいてほしかったと体を小さくした。

「どうした?」
「あ、いえ別に。なんでもないんですけど、ただ、ここって私には向いていないというかふさわしい場所ではないというか」

梨乃は居心地の悪さを感じながら、小さくつぶやいた。
周囲からの視線が気になりきょろきょろしてしまう。

「俺もどちらかというと、この間一緒に行ったラーメンのほうが気が楽だ」
「え、そんな風には見えませんけど」

疑うような梨乃に、侑斗はくすりと笑う。

「ただ慣れてるだけだ。子どもの頃から出入りしてれば自然とそうなる」
「……子どもの頃から。さすが御曹司」

ふと口にした梨乃の言葉にも侑斗はとくに反論せず笑っている。
御曹司というのは自覚しているらしい。
そのとき、ソムリエがふたりのテーブルにやってきた。