「せーーんぱい! 好きです」


仕事中にも関わらず、今日も私――陽咲 千里(ヨウザキ センリ)の前には、天使のような子犬が滑り込んできた。


「今日こそご飯の約束しましょ?」


彼の背後にあるのは給湯室。そこに用事のある私は、いつも阻まれる。

身長は180センチは超えていて。私よりも頭2つ分は大きい彼。

名前は確か⋯⋯君嶋圭太(キミジマケイタ)。歳は私よりも10歳も年下の24。

それが何故天使やら子犬なのかっていうと、フワフワの薄茶色の髪と、ぱっちりした潤んだ二重瞼。

それから鼻筋の通った高すぎない鼻に、薄い唇を持つ中性的で優美なその顔は、天使のようなイケメンだと言われるから。

しかし、私からすれば、なんとも軽すぎて信用出来ない輩。

つい最近、人事異動でこの会社の勤務になった私は、取締役員の秘書業務している。

その出勤翌日から「惚れました」なんて言ってチョイチョイ絡んでくるのがこの男。


「ふふっ。はいはい! 今は忙しいから、またねっ〜?」


こんな感じで私も本気では答えた事が無い。

大きな猫を被って、業務上の姿勢で受け流すのみ。