師範の孫だなんて思えない。
曲がった根性を叩き直す予定が、こんなことになるなんて⋯⋯。
その薄い唇が「ねぇ先輩」と呼ぶ。
視線で問うと、テーブルの上にあった私の手に、繊細だけど骨ばった長い指が重なった。
思ったよりも、ひんやりする手だ。
「俺と……恋してみませんか?」
私に派手に勝負を挑んだ後に、『恋』なんて言う物好きがいるなんて。
普通の男なら、か弱くて可憐な女がいいとか言って、すぐさま逃げていくわよ。
「恋ねぇ」
昨日キスをした桃色の唇が、挑発的に弧を描く。
大きな瞳が細められると、長いまつげが影を落とす。
幻想的に美しい。
なのに、テーブルに置かれている手はやっぱり大きくて、繊細だけど筋があって、男そのものだ。
少しづつ手の甲を包むと…親指で撫でた。
それに隠れてすっぽり私の手が見えなくなる。
思わずドキっとした。
ってやだ、何、年下にときめいてるのよ。
「さぁ、どうしようかしら。」
「別に頷かなくていいですよ。また勝負を申し込みに行きますから」



