「ごちそうさま。」
艶のある声で、私にだけ聞こえるようにつぶやいた。
「っ⋯⋯」
最後に「ちゅっ」とリップ音が鳴って離れたところで、私は正気に戻った。
どんっと突き飛ばし、いつの間にか腰にまわっていた腕を払いのけた。
ななな、なによ、こいつ⋯⋯!
この心拍の上昇は、負けた事に対する悔しさか、それとも10個も下の男にキスをされたからなのか。
「あれ?どうしました?
勝ったらくれるって先輩言ったじゃないすか。」
悪びれもせず、首をこてんと傾けた笑顔はまさに純真無垢だ。
ふわふわした薄茶色のくせ毛が頬にかかっていて。
一見女にも見えるくらい綺麗で、色素が薄くて、男に見えないのに⋯⋯
私を仕留めた素早い動きと、身体に回していた硬い腕は⋯⋯どう見ても男だった。
足が地面に貼り付いて動かない。
「言ってないわよっ」
い、言ったけど、認めたくなんかない。
唇に残る濃厚なキスの感触が落ち着かなくて、思わず手で覆いたくなる。



