と、言う事で。
私たちは指導中の訓練生たちの、背後に位置する試合場で向かい合った。
「ちゃんとルールはわかってるのよね?」
「もちろんっすよ。そんな強くないけど少しやってましたし」
帯を締め直し髪を1つに結びヘルメットを被る。
主審にはぎこちない光太くん、向かい側には道着にも着替えないニコニコした君嶋圭太。
とんでもない礼儀知らずは、こてんぱんにしてやるつもりだ。
規則破りもいいところ。
準備を終えた私は、試合後の戦利品を確認した。
「最後に確認よ。負けた方が―――…」
「勝った方の言う事を聞く、っすよね?」
女子にも見える可愛い顔を捻りながら言った。
それに大きく頷くと、天使のような無垢なスマイルを向けられた。
ふわふわのと緩いくせ毛が、オシャレだけど試合には邪魔そう。
甘い笑顔に思わずドキっとしそうになるけど、こいつは敵よ。
敵、敵、敵、敵!
この際、勝利して今後の付き纏いをやめてもらうのよ。
こんなに年下は興味ないんだから。
光太くんの右腕が上がったのを確認し、
突っ立ったままの相手を見据えたまま、私は腰を落として態勢を整えた。
こんなに舐められたのははじめてよ。



