深い深い眠りに落ちる獅子がいた。

獅子はとある国を加護する神獣だった。

しかし、強大な軍事力の前に為す術もなく、国は亡びてしまう。

神獣は、国の滅亡とともに、深き眠りについた。

獅子はたくさんの夢をみた。

--国が平和だった頃の夢を。

(あぁ。あの時に(かえ)れたら)

獅子はわかっていた。

それが、夢であると。

春の、爛漫とした花を愛でる人々も

夏の、照りつける太陽の下、働く人々も

秋の、輝く稲穂に感謝し祝う人々も

冬の、静かな山々も身を寄せ合う人々の温かさも

獅子は今も、全てが愛しかった。

今日もまた、眠れる獅子は夢をみる