夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



「攻めたつもりなのに、凛子さん激鈍なんだもんな」



そう言って、体を離した由良くんが苦笑する。



「どうして私を……?」



「凛子さんは覚えてないだろうけど、俺たち去年に出会ってるんですよ」



「え?」



ある日に思いをはせるように、由良くんが眼差しを一層優しくする。



「去年の夏、暑い中ぶっつづけで部活してたら倒れかけて、保健室のベッドに横になってたんです。でもその時、保健室に先生がいなくて。そしたら保健室に入ってきた女の先輩が、寝てる俺の額に濡らしたタオルを乗せて、スポーツドリンクを枕元に置いていってくれたんです」



記憶の糸が、由良くん凪いだ声によってほぐれていく。