夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



だけどそんな願いも虚しく、間もなく静寂を打ち破るように図書室のドアが開いた。



「凛子さん、早いですね」



静かに振り向けば、やっぱり彼がそこに立っていた。



「今日は俺が一番乗りかと思ったのになー」



そう言って、なにも知らない彼はいつもと同じ笑顔を私に向ける。



あれほど気持ちは固めたはずなのに、いざ彼を前にすると切なさが胸いっぱいにこみ上げてきてしまう。



「由良くん……」



「ん? どうしました?」



首を傾げながら、由良くんがこちらに歩いてくる。



……ああ、だめだ――。


私はぎゅっとこぶしを握りしめると、今にも泣き出しそうなくしゃくしゃな顔で、限界を越えてこみあげた想いをさらけ出していた。



「好き……、好きだよ、由良くんっ……」