夏色の初恋を君にあげる(野いちごジュニア文庫版)



「……っ!?」



突然のことに、顔を真っ赤にさせ口をぱくぱくさせていると、由良くんがくすっといたずらっぽく笑った。



「いいじゃん、同級生ごっこ」



いきなりそんなの反則すぎる。


由良くんに容赦なく揺さぶられた心臓が暴れて、今にも壊れてしまいそうだ。



「だから、俺のことも恭弥って呼んで」



「えっ? む、むり……っ。死んじゃう」



「勝ったご褒美くれないの? センパイ」



「う……」



さっきは同級生って言ったくせに、ねだる時だけ年下に戻るなんてずるい。



……だけど、1ミリのためらいもなくまっすぐに見つめてくる、このガラス玉のような綺麗な瞳から逃れる術を、私は持っていないのだ。



「……きょ、恭弥、くん」



「はい」



今にも消え入りそうな声で名前を呼んだだけなのに、由良くんはとても満足そうに笑った。



ああ、もう。すっかり年下男子に翻弄されてしまっている。


顔が熱いのも、逸る鼓動が収まらないのも、全部由良くんのせいだ。