紅葉色の恋に射抜かれて(野いちごジュニア文庫版)

 腕を組んで、女子団体チームの練習を見学していた葉山先輩が声をかけてくれる。
 えっ、葉山先輩?
 私は戸惑いながらも、言われたとおりに気を引き締めて的に集中する。
 すると、再び葉山先輩の声が私の耳に届いた。
「お前ならできる、大丈夫だ」
「……っ!」
 葉山先輩がそう言ってくれてるんだから、頑張らないと!
 そう思って弦を離すと、矢は的に向かって飛んでいった……かのように見えた。
 ほんの少しの誤差だった。矢は的枠に掠り、カンッとなんとも情けない音を立てて安土に刺さる。
 そんな……全部外れちゃった。
 悔しくて、手のひらが白くなるまで弓を握りしめる。後ろに立つ先輩たちの「またなの?」という呆れるような呟きが背中に突き刺さった。それどころか、的中率の記録をつけている部員たちからも「大会は無理なんじゃないか?」という声があがる。
 本当に、このままじゃ足手まといになる。
 それは誰かに言われなくても、自分がいちばんよくわかっていた。ここ最近の的中率は一本あたればいいほうだったから。
 結局、私はそのあとの練習でもほとんど的に矢をあてることができなかった。申し訳ない気持ちでいっぱいで、私は部活終了後に同じチームの先輩たちに頭を下げる。
「すみませんでした」
 先輩たちは、いつもは気兼ねなく話してくれるのに笑顔がぎこちない。たぶん、というより絶対、私と同じチームであることに不満があるんだと思う。それを決定づけるように、先輩たちは顔を見合わせる。
「とにかく練習して、挽回してくれればいいから」
「うちら、予選で負ける気ないしさ」
 それだけ言うと、先輩たちは制服に着替えて帰って行ってしまった。私は袴姿のまま、その背中を見送る。
 予選で負ける気ないって……私が負けてもいいと思って、練習をやってるように見えるってこと?