また、立ち位置にも意味があって、一番目の的の前に立ち、最初の一射目をあてることでチームの流れを作る大役が『大前』。続いて、大前が外したときにカバーする『二番立ち』、いい流れなら維持し、悪い流れなら断ち切る『中』、トリに繋げる『落ち前』、プレッシャーが最も加わる『落』の五つがある。
 男子団体戦の大前は予想するまでもなく、葉山先輩だった。
 葉山先輩の弓道が見られるの、この大会で最後なんだな。
 そんなことをぼんやり考えていると……。
「最後に、女子団体戦二番、一年から六実」
「……え?」
 今、私の苗字が聞こえたような……。
 きっと空耳に違いないと思いながらも、心臓はバクバクと大きな音を立てて騒いでいた。そのまま放心していると、葉山先輩の強い眼差しがこちらに向けられて、私はビクッと肩を震わせる。
「六実、返事はどうした」
「あ……は、はい……」
 なんとか声を発すると、葉山先輩は頷く。
 でも、射場に集まっていた部員たちからは、「二年でもなくて、一年の六実が選手?」、「三年の最後の大会だっていうのに、なんだかな」と、嫉妬に満ちたどよめきが広がっていた。
 そんな……私だって、どうして自分がって思ってるよ。
 自分で選んだわけじゃないのに、そんなこと言われても困る。
 私はただ、弓道を楽しみたいだけ。大会になんて、出られなくていいのに……。
 ぎゅっと、膝のあたりの袴を両手で握りしめて、身を縮こまらせていると、すぐに鋭い声が飛んでくる。
「この一ヶ月、六実の弓道を見ていたのに、その反応か」
 部員を一喝したのは、葉山先輩だった。葉山先輩は私のほうへ歩いてくると、部員の刺さるような視線から守るように背中を向けて、私の前に立つ。